9. 人員配置「3.0:1以上」は多いのか、少ないのか。
※下記コラムは2016年~2017年当時、株式会社玄海インベストメントアドバイザー在職時に公開していたものです。記事中の制度内容や統計数値等は当時情報のままですので、現在とは異なる場合があります。
特別養護老人ホームや特定施設では入居者3人に対して1人の介護者が最低基準として定められています。週40時間勤務のスタッフ数が母数となりますが、夜勤帯の人員配置も含めた数なので、実際の日中の配置数は以外に少なく感じます。
特定施設は基準上、「3.0:1以上」「2.5:1以上」「2.0:1以上」「1.5:1以上」のいずれかを標榜することが求められます。尚、最低基準の「3.0:1以上」を標榜しているものの、実際にはより手厚い体制を敷いているホームが多く、厳密な「3.0:1以上」のスタッフ配置では運営が難しいのが通説になっています。
特定施設の入居者の平均要介護度は2.5程度と言われていますが、例えば3以上の中重度要介護者の割合が高いホームにも関わらず、人員比率が手薄のホームは「寝かせきりの介護」を行っている可能性があります。多くの場合、介護度が上昇して移動介助のニーズが増えると、廃用症候群とならないようベッドから離床してもらいます。また車椅子のまま食事をとるのではなく、座卓に移動介助をするのが理想です。寝返りが難しくなった人には褥瘡の防止のために、分圧マットを使用したり、血流をよくするためにはマッサージも必要です。さらに、認知症高齢者でBPSDの症状から徘徊や暴力行為等が見られるようになると、個別ケアに相当な時間をとられてしまいます。このように、要介護度が上昇すれば、同時に介護サービスの量が増えるのは当然です。
“スタッフ数が極端に少ない”“人件費比率が低いホーム”は、ホームの実情に適した配置かどうかを検証する必要があるでしょう。
なお、特養の人員配置は平成26年の統計で多少室がスタッフ1名に対して利用者2.0人、ユニット型個室の場合は1.6人と手厚い体制が敷かれています。
ところで、いわゆる「3.0:1以上」の人員基準のイメージがつくでしょうか。仮に特定施設で「3.0:1以上」の人員体制、総戸数50戸で1Fが10戸、2~3Fが各20戸のホームを想定してみます。※
例えば朝食時にはホーム全体で5人のスタッフが常駐していても、建物が3フロアに別れていると、1Fは10人の入居者に対して1人の介護者、2~3Fは各20人に対して2人の介護者で対応しなくてはなりません。このようにホーム全体としては相当数のスタッフがいるように感じますが、フロア単位だと2人程度のため、実人数は非常に少なく感じます。入居者の介護レベルまでは想定していませんが、入居者10人に対して1人のスタッフ配置では全ての人に食事介助を行う余裕はありません。「3.0:1以上」はこの程度の人員配置だとあらかじめ理解しておいた方が良いでしょう。
※人員配置シミュレーションのイメージ
総戸数50戸/人員比率「3.0:1(標榜)」「2.97:1(実質)」/夜勤2名/朝晩・日勤・遅番が8時間勤務、朝晩及び遅番のみ食事対応のパート導入