【失敗しない老人ホームの選び方】Ⅲ.入居してから後悔しないために (4)居室
4)居室
居室にキッチンや浴室は必要か
多くのサ高住では、売り口上で「ここは施設ではありません。住宅です」と言います。その割には住宅として当たり前の水周り機能が無いことに違和感を感じませんか?
私は、本来、住宅の基本設備としてこれらの水周り機能は設置するべきと考えています。
但し、浴室に関しては、2人が浴室に入って介助できるスペースを確保するには、相当の広さが必要なため、家賃との兼ね合いを考えると仕方ないかなと思います。
さらに言うと、サ高住で居室に浴室が付設している場合でも、狭小なユニットバスの広さでは介助のための十分なスペースが確保できず、実際には使えない設備がほとんどです。
事前に居室内の浴室で介護が受けられるかどうかを確認した方が良いでしょう(通常、入浴介助が必要な場合は共用の介護浴室を使用します)。
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キッチンに関しては、入居者自身が簡単な調理や、好きなお茶やコーヒーを沸かすことができます。家族が訪問したときに、ちょっと果物を剥いたり、お湯が沸かせる事は便利です。
ホームはキッチンを利用することで、もっと生活が豊かなになることアピールすべきでしょう。
自室で線香もあげられないホームが住宅か
私はホームを内覧するときに、必ず「室内でタバコが吸えるか」を聞きます。
有料老人ホームの場合はほとんどがNGでしたが(自立型ホームはほとんどがOK)、近年のサ高住ではOKとするホームも見られます。同様に線香も火事の元になるからと、LED式の線香を進められるケースが多いのが現状です。
確かに火の管理は、事故リスクを踏まえると非常にナイーブであり、ホームの運営方針、もっと言うと事業者の腹の括りようが問われる問題です。過去には実際に老人ホームでタバコを火の元とする火災も起こっています。
自分はタバコを吸わないからという問題ではなく、個人の嗜好品や生活習慣が「自分の部屋」で認められるかどうか。もちろん、共同生活なので個人の自由度と事故リスクとを天秤にかけた時に一定の禁止事項は避けられませんが、その場合に入居者のこれまでの生活習慣や希望をどのように尊重をしてくれるでしょうか。
事業者の運営方針や介護に対する考え方が垣間見れる質問です。是非ぶつけてみましょう。
・仏壇を持参する高齢者は多い
※線香の火で煙感知器が反応する事はありません。火種が残った線香が他の線香に燃え移り、結果、火種が大きくなるケースがありますが、今は火事防止のために1本ずつ立てて使う専用台座や、線香の長さが短いもの等、多様な種類が売られています。
・認知症の方でも喫煙習慣の人はいる
※認知症の方でも、昔の生活習慣は継続して忘れません。食後の一服を楽しむ方もいます。但し、「異食」といってタバコを食べる場合もあるので注意が必要です。
いずれにしても、一律のルールで生活習慣を制限するのではなく、入居者の生活暦や希望を受け入れながら、それぞれの認知症状、ADLに応じた個別対応を検討してくれるかどうか。
ケアマネジャー、計画作成者の手腕が問われるところです。
トイレが要介護になっても使える設計になっているか
東京都北区の特養あじさい荘は、「オムツ外し」を掲げた特養のひとつです。
オムツの使用は、残存機能の低下が指摘されるだけでなく、自身での排泄ができなくなった精神的なショック、プライドの喪失は計り知れません。
安易にオムツを勧めるのではなく、ベッドから居室トイレまでの導線上で転倒の恐れがあるのであれば手すりを増設したり、認知症でトイレが認識出来なくなった場合はトイレドアを外したり、ハード面で自立排泄を支援する方法は多数あります。
そのためには、そもそも居室トイレが介助者が対応できるだけの十分な広さがあるかどうか、場合によってはドアを取り外せるか、事業者の排泄に関する考え方等を確認します。