コラム

【失敗しない老人ホームの選び方】Ⅲ.入居してから後悔しないために (6)医療

6)医療

在宅医療に強い医師と連携が取れているか

中重度対応可能なホームは、介護と医療の連携がいかに図れているかにつきます。

特に、在宅医療に熱心な医療機関が身近にあるかどうかで、「看取り」の実現は大きく左右されます。

ホームが医師を抱えることはできませんから、近隣にこうした医師と連携が可能かどうか確認をしましょう。近年は、かかりつけ医を中心とした病診連携が推進されていますから、こうした診療所が身近にあるかどうかが大きなポイントです。そして、実際にホームで看取りの実績があるかどうか確認をしてみましょう。昨年はどれだけのケースがあったか、具体的な事例を教えてくれるホームは良心的です。

(パンフレットに著名な総合病院が連携先として記載されていても、実際には優先入院等の特別優遇はありません)

 

看護師・歯科衛生士・理学療法士・作業療法士の専門職の役割

介護付で機能訓練加算という介護報酬加算を取得するには、通常の看護師のほかに専任の機能訓練指導員(理学療法士、作業療法士)の配置が必要となります。従って、本加算を取得しているホームは少なくとも、リハビリ系スタッフの配置が手厚い事は間違いありません。

また、近年は歯科衛生士の役割も注目されています。口腔ケアを徹底することで、高齢者の大きな死因となる誤嚥性肺炎の防止に期待できます。

 

一方で、有料老人ホームの食堂は、ほとんどが機能訓練室と兼ねています。全く使用されていないルームランナーや平行棒が食堂の隅っこに野ざらしになっているホームは珍しくなく、リハビリに対してどのような取組みを行っているかを確認しておきましょう。

 

医療サービスを、適当な言い回しでごまかされるな

ホームに医療サービスの質問をすると、「定期的に往診にきてもらっています」と、とんちんかんな回答をされるケースは非常に多いです。あるいは「月に2回、先生に来てもらっています」も微妙な表現です。

前者の「往診」とは、急な熱発等で医師が自宅まで診察にきてくれる事です。日頃から通院している「かかりつけ医」でないと、こうした緊急時の対応はしてくれません。後者はいかにもホームの依頼で医師が定期訪問しているような説明に聞こえますが、居宅療養管理指導という介護保険のサービスで、月2回の訪問指導で具体的な治療を行うものではありません。

24時間体制で在宅医療を提供できるサービス体系は前項のとおり、「在宅療養支援診療所」です。

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このように、ホーム側の適当な言い回しでお茶を濁されないよう、正確な名称で確認をします。

また、特養の場合は、人員基準で医師の配置が必須ですが、多くが非常勤医師で常駐はしていません。医師の勤務時間数は10~20時間/月が最多という統計もあるため、過分な期待はしない方が良いでしょう。

 

・往診

※急な熱発等のため、緊急的に訪問診療する形態。従って「往診専門」は間違った表現。

 

・訪問診療

※自宅に医師、看護師が訪問する診療形態。診療所の拠点は持たず、訪問診療を専門で行う医療機関もあり。

 

・居宅療養管理指導

※介護保険のサービスのひとつ。区部支給限度額には含まれず、単独で利用可能。月2回の訪問指導を行うサービスで、医師、薬剤師、歯科衛生士等が対応。

 

・在宅療養支援診療所

※24時間の連絡体制を持った診療所。今後の在宅医療の中心的役割を担うを考えられており、看取りの場合は本診療所の協力が不可欠。

 

・その他、ホームが独自に行う健康相談

※近年は少ないですが、高額ホームの中には、ホーム独自の医療相談サービスとして定期的に医師や看護師がホームを訪問するケースがあります。この場合、ホームの費用で医師の人件費を賄っており、医師はあくまでも相談で治療を行うことはできません。

 

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