コラム

【失敗しない老人ホームの選び方】Ⅲ.入居してから後悔しないために (8)入居相談は「どこの」「誰に」すればいい?

8)入居相談は「どこの」「誰に」すればいい?

現在、ホームページには多くの「老人ホーム検索サイト」が展開されています。厚生労働省が運営するサイトのほか、市区町村、民間会社等、扱う施設タイプや検索機能はサイトによって様々です。老人ホームを探す場合、どの媒体を頼りにすれば良いでしょうか。

 

ケアマネジャーは、それほど民間ホームに詳しくない

既に介護保険サービスを利用している方であれば、最も身近な相談員はケアマネジャーです。まずは最優先の相談先と言えます。ケアマネジャーが過去に紹介したホームの事例や、サービスの実態や評判を知っていれば、是非聞いてみましょう。

 

ただし、ケアマネジャーの日常業務は煩雑で、老人ホームの情報収集や見学する時間の余裕はありません。一方で、身近に新しいホームが増え続けているため、最近の施設事情に疎い人は多いようです。その場合は、後述する「老人ホーム仲介事業者」の紹介や、市区町村が配布している施設一覧の情報を提供するケースが多いようです。

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病院での相談員と言えば、MSW(医療ソーシャルワーカー)です。MSWは患者の退院後の治療で地域サービスとの連携や情報提供を行う相談職で、通常、病院内の地域医療連携室に在籍しています。入院患者が退院から老人ホームへの住み替えを行う場合は、MSWも情報提供者の役割を担います。

ただし、MSWも個々の老人ホームに詳しいとは限らないため、前述のケアマネジャーのような補足的な支援しかできないケースが一般的なようです。

 

老人ホーム仲介事業者は信頼できるか?

全国に数百も存在していると言われる「老人ホーム仲介事業者」。特に都市部では多くの競合会社が集積しており、老人ホームの運営会社にとっても入居者の集客を担うビジネスパートナーとなっています。

多くの仲介事業者は老人ホームと提携しており、入居検討者からは無料で相談を受け、入居が決まれば、老人ホーム側から仲介料を徴収するスキームです(報酬額は30~50万円、入居一時金の3~5%程度)。見学同行はもちろん、老人ホームに替わってサービスの詳細を説明してくれるため、非常に頼もしい存在です。

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注意する点はひとつ。

仲介事業者とホームが事前に事業提携しているという点です。

仲介事業者は自社と提携しているホームの中から、入居検討者の希望に沿ったホームを紹介しますから(そうでないと仲介料が得られない)、提携外のホームの情報を持ち合わせていない、あるいは紹介ができないというジレンマを抱えています。

仲介事業者によっては、提携外のホームでも紹介してくるところもあります。従って、その仲介事業者がどの程度のホーム数と提携しているか、地域情報を集めているかは事前に聞いてみましょう。

なお、ネット上に溢れる「老人ホーム検索サイト」も同様です。掲載料を支払ってくれるホームしか掲載しないサイトもあります。掲載料を支払ったホームは写真が公開できる、あるいは検索で上位に抽出される等の掲載基準がサイトによって違います。

サイトに掲載されている情報が「全ての情報」かどうかを良く注意しておきましょう。

 

頼りになる口コミの情報

どのようなサービスでも、一番頼りになる情報は口コミでしょう。実際にご家族の方が入居したとか、サービスを利用した感想は非常に信ぴょう性が高いと言えます。

ただし、老人ホームの場合は対人サービスのため、受益者の主観による評価にならざるを得ません。また、施設長が替わった、M&Aで運営事業者が替わったというケースがあるため、口コミだけが絶対評価にはならない点は注意しておきましょう。

 

集めるべき情報とは?

このように、老人ホームの入居相談は専門機関や職種が未だ未成熟のため、複数の媒体から情報を集めて検討する事をお薦めします。

また、入手すべき情報の一つに「重要事項説明書」があります。老人ホームの運営状況の全てが分かる書類で、入居検討時に希望すれば開示してもらえます。本書には、建物概要、運営会社の情報、入居率、スタッフの離職率等の詳細も分かります。必ず重要事項説明書は入手しましょう。

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最後に。

実際の体験や印象から受けた情報も大切です。必ず、複数のホームの見学、あるいは体験入居の制度があれば利用しましょう。食事の試食が可能であれば、ホーム毎の食べ比べも良いでしょう。

 


(2022年8月加筆)

現在、高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)が組織化され、老人ホーム仲介事業者には同団体への事前届出を推進しています。同団体が運営するサイトでは仲介事業者の検索ができるばかりでなく、仲介事業者の会社概要やサービス情報の詳細が公開され、仲介事業の透明性が図られています。

https://koujuren.jp/

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