コラム

11. 適正な開発規模とは

※下記コラムは2016年~2017年当時、株式会社玄海インベストメントアドバイザー在職時に公開していたものです。記事中の制度内容や統計数値等は当時情報のままですので、現在とは異なる場合があります。


高齢者住宅を開発する上で適正規模はあるでしょうか。

平均値で言うと、サ高住は30戸程度、大手事業者のブランドであれば50~80戸程度です。介護付有料老人ホームはかつて100戸超の大型物件も珍しくありませんでしたが、近年は事業者公募で定員数が制限されるケースが多く50戸が平均的でしょう。さらに住宅型は宅老所のような10戸にも満たない小規模ホームから自立型の大型ホームまでと幅広い点が特徴と言えます。

 

運営事業者の立場からは、開発段階からの諸経費、運営後の固定人件費、事務費、営業活動費等のコストパフォーマンスを考えると、一定のスケールメリットが得られる規模を求めます。最低でも50戸、できれば70~80戸規模が理想でしょう。

ファンド業界はもっと欲張りかもしれません。最低でも50戸規模、上限はなく、むしろ大きければ大きいほどウェルカムというのが本音です。SPC組成のためには弁護士、会計士へのフィーや諸経費が掛かるため、大規模案件あるいは中規模の場合であればバルク買いができなければ採算性が見込めないからです。

 

ところで、大規模ホームのデメリットは「集客」「スタッフ確保」の難しさに尽きます。一般的に要介護者向けホームの退去率は年間20~25%程度。100戸のホームであれば、仮に満床稼働に達していれば年間に20~25人が退去する計算です。年間を通して空室を埋めるべく、集客活動を行わなければなりません。さらに近年はスタッフ確保の問題がより深刻です。十分なスタッフが集まらないために一部のフロアをオープンできない”事態は近年では珍しくありません。直接採用では限界があるため、一部で派遣スタッフを登用したり、スタッフの定着率向上に福利厚生に力を入れる事業者も増えています。以前、コラムの中で介護付の人員比率に触れましたが、例えば50戸規模でも「3.0:1以上」の配置を行うには、短時間パートも含めて20人前後のスタッフ確保が必要となってきます。これだけのスタッフ数を一から集めるには相当の労力を要するはずです。

 

話は戻りますが、我々も含めて開発を行う立場の側は、願わくば大規模案件に関わりたいと考えているはずです。

“一般のレジデンスに相当する規模”         

“大規模開発に見合う土地条件”

“介護に依存しない新たなニーズの掘り起こし”

これらのキーワードは「CCRC」を連想させます。

果たして「CCRC」は周りの思惑どおり、新たな事業領域として成長できるでしょうか。

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