コラム

20. 通常規模/終日型デイに未来はあるか?(2)

※下記コラムは2016年~2017年当時、株式会社玄海インベストメントアドバイザー在職時に公開していたものです。記事中の制度内容や統計数値等は当時情報のままですので、現在とは異なる場合があります。


通常規模/終日型デイに求められている役割は何でしょう。

次年度の介護保険法改正では地域密着型デイの総量規制が導入されますが、背景として地域包括ケアの基幹サービスとも言える「小規模多機能型居宅介護」の拠点を増やしたいという国の意向です。デイの開発規制がすなわち小規模の増加に繋がるとは到底思えませんが、確かに地域包括ケアを推進する上では24時間型のサービス拠点が必要です。

 

但し、小規模多機能の運営の難しさは業界で周知のとおりです。中でも集客の難しさとして筆頭に挙がるのが、ケアマネジャーが積極的に本サービスの紹介を行わないという点です(ケアマネジャーが自身の利用者を小規模多機能等に紹介する際、当利用者との居宅介護支援契約が解除される)。

また、早く登録定員を増やそうと軽度要介護の利用者が増えてしまい、サービス実績は増えても介護報酬収入が伸びないケースも散見されます。本事業では要介護度2.5以上の利用者を中心に集客しなければ黒字化が難しいと言われますが、一方で自宅介護の限界は要介護3が一つのボーダーです。近年、特養への入所基準が要介護3以上となったように、本レベルになると生活動作全般に介助が必要となるため、施設入所を選ばざるを得ないのです。

小規模多機能は、こうした施設入所が必要な介護レベルに達した人の内、自宅介護を続ける人を集客しなければ事業採算が取れない事業です。本事業のオペレーティングの難しさがお分かりでしょうか。

 

話を冒頭のテーマに戻しますが、半日型のリハビリデイは明らかに軽度要介護者をターゲットとしたサービスです。

対して、通常規模/終日型デイに求められている役割はギリギリまで自宅介護を続けるための支援であり、利用者の裾野はもっと広がります。これを小規模多機能という事業形態ではなく、デイサービスとしてどこまでできるかが肝と言えます。

 

前述のコラムのとおり、巷に溢れる廉価なレクリエーションの提供だけでは淘汰されるのは時間の問題です。また、後期高齢者がいくらリハビリを繰り返しても目覚ましい身体的回復は望めません(そもそもリハビリの目的が違う)。

今後の通常規模/終日型デイには「レクリエーション」ではなく「介護力」、さらに「認知症予防」だけでなく、「認知症ケアへの対応力」が必要でしょう。事業者は在宅介護に寄り添えるだけの専門スキルを伸ばしていかなければなりません。

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