コラム

【失敗しない老人ホームの選び方】Ⅲ.入居してから後悔しないために (5)介護2/2

5)介護

サ高住・住宅型は併設サービスの確認。24時間体制の考え方を聞こう

前項ではスタッフが常駐する介護付(包括ケア)の人員体制に触れましたが、住宅型やサ高住(非包括ケア)が、ケアの質で劣っているかというと、必ずしもそうとは限りません。

入居者のニーズに応えるために試行錯誤を行っているホームもたくさんあります。非包括ケアの場合の介護サービスのチェックポイントは次のとおりです。

 

・24時間対応型のサービスが想定されているか

※「定期巡回型訪問介護看護」「(看護)小規模多機能型居宅介護」の両サービスは24時間型対応サービスです。サ高住、住宅型の場合、いずれかのサービスを併設している、あるいは近隣に利用できる事業所があるかどうかを確認します。但し、本サービスは運営が難しく事業採算性も低いことから、全国でも拠点数が少ないのが現状です。周辺にこれらサービスが無い地域では、代替機能をどのように考えているか聞いてみましょう。

                                                          

・区分限度額を超過した場合の保険外サービスの備えがあるか。

※要介護3を境に、区分支給限度額の範囲ではサービスが足らなくなるケースが出てきます。自宅の場合は、家族の手伝いが期待できますし、包括ケアの場合は介護報酬が1日単位で決められているので、これをオーバーする心配はありません。

サ高住、住宅型の場合は、家族の支援が無い中、全てのサービスを介護保険で賄うことで、自宅よりもサービスの利用率が上がります。前項のとおり、24時間型のサービスも介護報酬は固定の一定額なので、金額の上限を心配する必要がありません。これらのサービスが利用できない場合は、区分限度額を超過したサービスは保険適用外となり、全て実費計算となります。

このように、区分限度額を超過した場合に、どのような代替手段があるかを確認します。また、同じ介護度の人でどれだけの月額費がかかっているかの実例も聞いてみましょう。

 

認知症ケアについて、具体的な取組みがあるか聞いてみよう

認知症の発症率は80歳を超えると急増し、85~89歳で約4割と言われています。特養では程度の差はあるもののほぼ全員が認知症というのも珍しくありません。

こうした認知症に対してホームとしてどのような取組みを行っているか聞いてみましょう。

現在、認知症に効果が高いと考えられる運動プログラムや各種ツール、メソッドは多岐に渡りますが、「何が一番効果が高いか」というのは一口に断定はできません。ホームの認知症ケアの取組み方として、例えば「バリデーションを全社で勉強する」「施設内に回想療法室を設ける」等の取組みは非常に前向きで良いと思います。

 

但し、ホームが行う園芸療法を「入居者全員に一律に課す」というのもナンセンスな話です。専門的なツールをいかに入居者別に対応ができるか、様々な療法をいかにコーディネートできるかがポイントのようです。

従って、前述の質問に対しては、卑怯な回答かもしれませんが

「入居者それぞれの症状に対して、入居者に合った歩みより方や療法を検討していく」が

ホームの目指すべき姿と考えています。そのためには、入居者の認知症状をスタッフ間で共有する事や、ホームで対応できるケアツールのバリエーションを増やす事が必要です。

 

<認知症ケアの代表的なメソッド>

・バリデーション

※アメリカのナオミファレルが提唱する認知症のコミュニケーションツール。問題行動の要因となる背景に注目し、認知症の方と協調して問題解決を図る考え方。

 

・センターパーソンドケア

※英国のトム・キットウッドが提唱した認知症ケアを含むソーシャルワークの考え方。これまでの介助、業務中心の考え方から脱し、認知症の人のニーズが中心に据えられるべきと訴えた。

 

・ユマニチュード

※フランスのイブ・ジネストが広める認知症ケアのコミュニケーションツール。「触れる」「見つめる」といった介護の基本原則を踏襲しながら、問題行動にも対応できると近年広まっている手法。

 

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