コラム

14. 「身体的リハビリ」と「精神科リハビリ」の違い

※下記コラムは2016年~2017年当時、株式会社玄海インベストメントアドバイザー在職時に公開していたものです。記事中の制度内容や統計数値等は当時情報のままですので、現在とは異なる場合があります。


高齢期における、うつ病等の精神疾患の発症は珍しくありません。

認知症と老年性うつ病との線引きが難しく、うつ病を原因として認知症が発症するケースもあります。昨今の介護予防への高い関心を考えると、高齢者のメンタルヘルスの分野は避けては通れないテーマです。

 

ところで、障害の概念は1968年のWHOの定義から始まり、幾度となく新たなモデルに刷新されてきました。2001年に開かれた世界保健会議による国際生活機能分類(ICF)が直近のモデルと言われ、社会や相互作用機能を取り入れた内容となっています。

ICFでは身体要素を「心身機能」「身体構造」に分類し、精神科リハビリテーション(以下、精神科リハビリ)に該当する項目は「心身機能」の内、「精神機能」の一部分、その他の大半は身体的リハビリテーション(以下、身体的リハビリ)に対応した分類となっています。障害関連の専門職種を見ると、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等はいずれも身体的リハビリに関わる専門職です。

これだけでも精神科リハビリの取り組みが後発であることが分かります。今日、精神科リハビリへの対応が強く求められている背景のひとつに、諸制度及び環境上の整備の遅れが大きい事は言うまでもありません。

 

一方、精神障害に対する我々の認識はどうでしょう。

精神障害者が地域での社会参加を促進する上で障壁と考えられるのは、大きくは病気に対する誤解や偏見です。全国精神保健福祉会連合会が行った調査結果では、精神障害者が「生きていてよかった」と実感するときの問いに対して、同じ病気の仲間との出会いを筆頭に、職場、恋愛、結婚等が上位を占めました。

これは、精神障害者にとって他者や地域との接点が大きな支えや希望になっていることが分かります。地域社会が精神障害を受容できる社会として機能するには、病気に対する理解が進むことが前提と言えます。

 

※精神科リハビリ:

住居・仕事・社会のサポートネットワークを含む「心理社会的リハビリテーション」と捉えられる。身体的リハビリが病院での生活関連動作を中心とした評価・訓練を行う事でほぼ病院内で自己完結できるのに対し、精神科リハビリは疾患と障害を分離しずらい点が特徴。

障害への対応では、例えば実社会の中で、社会資源の利用、周辺との役割関係の理解といった日々の生活で避けられない種々の課題と向き合う。精神科リハビリの方が、より非専門職を含む幅の広い地域や人材が支援に関わるケースが多い。

 

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